職場内恋愛
奈々が左側にいる。
たったそれだけのことが俺をおかしくさせる。
いつもより数倍丁寧な運転。
なるべく長くこうしていたいからスピードは規定速度ちょうど。
「そんなこと…っ」
奈々は俺の話を聞いて笑っている。
こんなこと、もう2度とないと思ってたのに。
奈々が助手席で俺だけに笑ってる。
「………藤堂せんせ?」
時間が遅いからか車は1台も通らない。
それをいいことに路肩に車を止めた。
俺の意志じゃない。
勝手に足がブレーキを踏んでいた。
『…2人きりのときは…そう呼ばないでくれないか』
言っちゃいけない言葉だったかもしれない。
言ったあとに思った。
でも、どうしても、これだけは言いたかった。
「…ダメ…ですよ…」
今さっきまで楽しそうに笑っていた奈々は俯く。