職場内恋愛
『ごめん。話したくない。』
立ち上がり、風呂へ行こうとする俺の背中に涼の言葉が届く。
『言いたくなったら言えよ。
俺とお前の仲なんだから、遠慮だけはすんな』
そんな涼の言葉に柄にもなく感動する俺。
いつもならきっと
何言ってんだ、このバカは。
なんて思っただろう。
でも、治りかけていた傷が悪化した今、その傷口に涼の言葉が染みた。
どうしようもなく、泣きたくなった。
俺が
『名前で呼んで欲しい』
なんて言わなかったらいい関係が、築けてたのかな。
俺が
『送って行こうか』
なんて言わなかったら奈々は涙を流さずにすんだのかな。
俺…後悔してばっかりだよ。
俺はまだ…後ろを見てばっかりだよ。
きっと、明日へ1歩を踏み出すことはできないんだ。
奈々が隣にいてくれない限りは。