職場内恋愛
視線を逸らし、俯いた。
「やっぱりまだ…スキ、なんですね?」
「…………………」
何も、言えなかった。
否定も肯定も、できなかった。
「バスの中でもいつも橋野先生の視線の先には藤堂先生がいた。
寝ている藤堂先生の顔を切なげな目で、ずっと見つめていた。
そんなにスキなら、また1歩、踏み出してみたらどうですか?」
「………そんなこと…」
「え?」
「そんなこと…できないですよ…」
できない。
私にはまた1歩踏み出すなんてこと、できないんだ。
だって…優作を拒んだのは、私なんだから…
「ずっと、思ってたことがあるんです。
橋野先生…何かにひどく、怯えていませんか?
急に、とても傷ついたような顔をするときがあるから心配だったんです」
山崎先生はすごく、いい先生だ。
何も言葉にしていないのに私の闇に気づいた。
「実は…」
私は口を開く。
話している間中、震えが止まらなかった。
あの、恐怖を思い出すと今でも眠れない夜がある。
でも、山崎先生がずっと、背中をさせてくれていたおかげで、私は取り乱すことなく、全てを話すことができた。