職場内恋愛
「なんだか久々ですね、ここで会うの」
奈々は俺の隣に立つとそう言って少し、笑った。
確かに、久々だ。
お互いがお互いを避けて同じ時間にこの場所にいたことがなかった。
『橋野先生。
さっそく…本題入ってもいいですか?』
何も言わない奈々。
俺は続けた。
『前にも言ったけど、俺はいつまででも待ってられる自信、あるから。
奈々のその傷が癒えるまで俺、待ってるから。
………いや、俺がその傷、癒してみせるから。
あの記憶が薄れるくらい、
俺との記憶を増やそう。
そして、もう2度とあの夜のこと思い出せないようにしてみせるから。
だから…もう1度、やり直そう。』
プロポーズみたいな告白だな、なんて頭の隅で考える。
でも、それくらい真剣だった。
「……私、きっと、また優作を傷つけると思う。
きっと、また優作を拒んじゃうと思う。
それでも…それでも私と一緒にいてくれますか?」
久しぶりに「優作」そう呼ばれて心臓がドクッと鳴った。
やっぱり、俺には奈々しかいないんだ。
改めてそう感じた瞬間だった。