美女は魔獣
――前も後ろも、右も左も、どこを見ても真っ暗な中にひとりで立っていた。

他に誰もいないのか、何の音も聞こえてこない。

静かすぎるほどの静寂が逆に耳につく。

しかし恐怖心や心細さはなかった。

ひとりでいることも暗いのにも慣れている。

ただ、お腹が減った。

空腹を満たすためにここに来たのだ。

それなのに、一向にその欲求は満たされない。

ここはどこなのか、歩いても歩いても何もない、何も見えない・・・。

歩いても、歩いても、歩いても、歩いても・・・――
< 6 / 9 >

この作品をシェア

pagetop