美女は魔獣
給料日に奮発して買った肉、普段は食べれない高級な肉。
肉を焼いたときの何ともいえない香ばしいニオイだけを残して、高級サーロインステーキはなくなった。
目をパチパチさせながら、空になった皿と彼女を交互に見つめた。
満腹になった彼女が満足そうに深く息を吸い込み、その息をフ~っと長く吐き出すと彼女の身体に異変が起る。
隆也は今日、二度信じられないものを見た。
一度目はついさっき、空になったサーロインステーキの皿。
二度目は今、彼女の耳の後ろ辺りから角のような物体が、続いて背中から黒い、まるで悪魔が持つような羽根が生えているではないか。
「・・・・っ!?」
声にならない悲鳴を、隆也は上げた。
「オマェイイ・・・ニク、キニィタ」
彼女がニィ・・・と笑うと、八重歯が見えた。
とんでもない事態が目の前で起こっているというのに、人間なのかどうかわからないようなモノが目の前にいるっていうのに、隆也は何故かその八重歯を見て“可愛い”なんて思ってしまった。
実際、顔は確かに可愛いいのだから仕方ない。
「ニクハ・・・ダレ、ドコデテニハウル」
――何の肉か、どこで手に入るか・・・ってことか?――
このとんでもない状況に副わない普通っぽい質問。
「えと、肉は、牛肉・・・肉屋で買った」
片言の日本語で、ところどころわからないが隆也もとりあえず普通に答える。
「ギュゥニク・・・・ニクヤ」
彼女はポツリと呟いて周りを見回し、窓を見つけると今度はしっかりした足取りでスタスタと歩いて行った。
「オマェ・・・キニィタ・・・クワヌイ・・・」
よくわからない言葉を残して笑ったかと思うと、彼女は3階の部屋の窓から躊躇なく飛び降りた。
本日三度目の信じられないものを見た隆也は、驚いて窓に走り寄った。
アパートの辺りにはあまり電灯がなく暗かったが確かに下に落ちたような感じはない。
落ちた音もしなかったから、きっと落ちていないのだろう。
では、落ちていないとすると一体彼女はどこへ消えたのか。
あの黒い羽根を思い出してみたが、そのとんでもない想像を打ち消した。
そしてその夜、隆也はまったく眠りに付くことができなかった。
【つづく】
肉を焼いたときの何ともいえない香ばしいニオイだけを残して、高級サーロインステーキはなくなった。
目をパチパチさせながら、空になった皿と彼女を交互に見つめた。
満腹になった彼女が満足そうに深く息を吸い込み、その息をフ~っと長く吐き出すと彼女の身体に異変が起る。
隆也は今日、二度信じられないものを見た。
一度目はついさっき、空になったサーロインステーキの皿。
二度目は今、彼女の耳の後ろ辺りから角のような物体が、続いて背中から黒い、まるで悪魔が持つような羽根が生えているではないか。
「・・・・っ!?」
声にならない悲鳴を、隆也は上げた。
「オマェイイ・・・ニク、キニィタ」
彼女がニィ・・・と笑うと、八重歯が見えた。
とんでもない事態が目の前で起こっているというのに、人間なのかどうかわからないようなモノが目の前にいるっていうのに、隆也は何故かその八重歯を見て“可愛い”なんて思ってしまった。
実際、顔は確かに可愛いいのだから仕方ない。
「ニクハ・・・ダレ、ドコデテニハウル」
――何の肉か、どこで手に入るか・・・ってことか?――
このとんでもない状況に副わない普通っぽい質問。
「えと、肉は、牛肉・・・肉屋で買った」
片言の日本語で、ところどころわからないが隆也もとりあえず普通に答える。
「ギュゥニク・・・・ニクヤ」
彼女はポツリと呟いて周りを見回し、窓を見つけると今度はしっかりした足取りでスタスタと歩いて行った。
「オマェ・・・キニィタ・・・クワヌイ・・・」
よくわからない言葉を残して笑ったかと思うと、彼女は3階の部屋の窓から躊躇なく飛び降りた。
本日三度目の信じられないものを見た隆也は、驚いて窓に走り寄った。
アパートの辺りにはあまり電灯がなく暗かったが確かに下に落ちたような感じはない。
落ちた音もしなかったから、きっと落ちていないのだろう。
では、落ちていないとすると一体彼女はどこへ消えたのか。
あの黒い羽根を思い出してみたが、そのとんでもない想像を打ち消した。
そしてその夜、隆也はまったく眠りに付くことができなかった。
【つづく】