失い続ける世界。
5
夜になると───
穴は周りの色と同化してしまいます。だから、見た目には誰も世界が滅びつつあるなんて判らないでしょう。
夜はしん、としていて、まるで動かない木馬のように静かです。
だけど、耳を澄ましてみると、
よくよく耳を澄ましてみると、聞こえるのです。
世界が失い続ける音が。
ぱりぱり、ぱりぱり、と枯葉を踏むような音を立てて、着々と穴は広がっているのです。