唇。


(喉渇いた…下に自販機あったよな。)


財布片手に階段を下りて、自販機を見上げる。
500mlのペットボトル以外、100円。
わー、お買い得。
内心、ガッツポーズ。
何を飲もうか悩んでると。


「あざーす。」

「あざーす。」


二人の男の声。
えっ!?と思ってそっちを向けば、昨日の…飯田さんとさっきの男の人。


「え?え!?」


二人の男の人を交互に見る。
あ、奢ればいいのか…な?
ちゃりん、と100円入れる。


「ど、うぞ。」

「え、いーんですか!?」

「ぅええ!?」


そうくる!?
飯田さんの言葉にあたふたあたふた。


「いただきまーす。」


ぽちっとボタンを押したのは、もう一人の人。


「あ、遠野さん、それ俺の!」

「いや、飯田さんが押さなかったから。」


と、コーヒー片手にけらけらと笑い合ってる。
再度、お金を入れれば、今度こそ飯田さんがボタンを押した。
自分のコーヒーも買って、三人で会話が弾む。
あたしの年齢、高校、前勤めてた会社に始まり、飯田さんの事、遠野さんの事。
飯田さんは一児のパパ。
そして驚いた事に、遠野さんも一児のパパらしい。
うーん…見えない。
そうこうしてる内に、姉が出勤し、話の輪に入った。

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