唇。
早い事に入社して一年半が経過した。
その間には楽しい日々だけが続いた。
派遣事務員の入れ替わりが激しくもあったけど、今は落ち着いた感じ。


(さむ…あ~…もうすぐバレンタインだな~。)


年明け間も無く。
事務所から出れば、白い息が吐き出される。


「ヤヨ~、もう帰んの?」


呼び止められ、振り返れば。
今では、彼等には「ヤヨ」と呼ばれるほど仲がいい。


「飯田さん、遠野さん。」


どうやら彼等も帰るらしい。
いつも彼等は帰りが遅い。
定時で上がる時も稀にあるが、20分ぐらい世間話をして解散する。
あたしもたまに混ざるけど、バスの時間があるからなかなか…。


「帰りますよ~?バスがなくなります!」

「そう言えば、遠野さんも方向一緒じゃないですけ?」


飯田さんがホットココアを購入してる遠野さんに聞けば、手を温めながら「そうですよ。」と返事した。
方向一緒でも、結構離れてますから!
駅で言えば5駅違う。


「ヤヨ乗せてけばいいんじゃないすか?」


笑う飯田さん。
彼的には冗談なんだろう。
遠野さんも軽く返事をする。


「別いいっすよ?ヤヨ、乗ってく?」

「ぅえ!?や、迷惑ですからいいですよ。」

「年下が遠慮すんなよ。車持ってくるから。」

「あ~…すいません。」


そう言って遠野さんは事務所裏の駐車場へ歩いて行った。
待ってる間、一服する飯田さんと時間つぶし。
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