唇。
砂利が車に潰される音。
目の前に止まる車。
排気音が若干ヤン車じゃないっすか~?


「じゃ、お疲れ様でした。」

「お疲れ~。襲われんなよー。」

「あはは、大丈夫ですよ。」


飯田さんに挨拶をして、助手席に乗り込む。


「お願いします。」

「はいはい。」

「安全運転で。」

「俺はいつでも安全運転ですけど。」

「え、ヤン車なのに?」

「ヤン車言うな。ってか、ヤン車違うわ。」


そんな軽いやり取り。
これが、あたしと遠野さんの普通。
凄く居心地がいい空間だった。



それから時間が合えば駅や自宅近辺まで送ってくれた。
たまにお喋りに夢中で、うちの近所のコンビニの駐車場に停まって、一時間くらい笑い合った。

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