唇。

九時。


冊子も読み切り、再度暇を持て余す。

その時、中年の男性が挨拶と共に姿を現した。
どうやら、所長さんらしい。
年齢よりも若く見えるのは働く男だからなのか。

姉と共に所長に挨拶へ。
うー…逃げ出したい。


「所長、妹の三月です。」

「ぉ、お願いします。」

「皐月さんとは、あまり似てないね。」


にこやかに返される。
…いい人そう。
自然とあたしも笑う。



ちなみに、皐月とは姉の名だ。
五月生まれだから皐月。
三月生まれだから三月。
…安直だわ。





挨拶もそこそこに、姉は仕事のに戻り、あたしは所長と一緒に、接客用であろう中央テーブルに対面で腰掛けた。
そこで、会社がしてる主な仕事と、あたしが手を付ける事務仕事の説明を聞いた。
頭がちんぷんかんぷん。
説明が終われば、再び姉の隣に腰掛けて、所長は慌しく事務所を出て行った。
この事務所の親会社の支店へ行くらしい。
いつもあんな感じと言うけど…所長がこんなに慌しく動くのは珍しいんじゃ、と思いつつ、パソコンを起動させた。
< 7 / 22 >

この作品をシェア

pagetop