憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)
10代の女の子が利用するようなホテルではないが、ドアマンもベルボーイも一礼し、ココは堂々とロビーを歩いていく

迷うことなく、20階以上の部屋にしか通じない“エクゼクティブ”エレベーター

もちろん、専用のカードを入れないと動かないのだが、慣れた手つきでカードを挿入し、エレベーターはココを乗せ、静かにスピードを上げて、上昇していった

「ブー」

「・・・・・」

「ブーブー」

「・・・・・」

防音になっているもののあまりに無反応なので、ココの指はインターホンから離れなる気配はなく

「ブーーーーーーーーーー」

夕べ大騒ぎだったジョーとケーゴはそこでようやく部屋に響く音に気がついた

「・・・・・」

「・・・・・」

ふたりは目を半分閉じたままじばらく無言の会話を交わすものの

「チッ・・」

ケーゴが舌打ちをし、のそのそとベットから体を起こし、ドアのロックを外したのだった

ガチャ・・

確かにロックは開いたのだが、なんの反応もないドア

ケーゴがそっとドアを開けてみると

ふて腐れたココが腕を組んで立っていたのだった

「ゲッ・・」

思わずでた言葉に

「何よ?朝イチがソレ?」

とさらに不機嫌になったココはケーゴを追い越し部屋に入って行ったのだった




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