憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)
東野心花・・・

俺の大事なツレの妹

俺の作品に初めて写りこんだ人物

一見、5つも下に見えないくらい大人びているのに、ふと見せる表情つーか、雰囲気っつーかうまく言えないけど、あどけなさを感じる不思議な子

ありがたいことに、こっちの世界で生きていく素質を持って生まれたのに、その気がない彼女を説得し、その何倍もの時間を掛けて説得した東野夫妻と彼女の兄弟

そんな彼女に何かあったなんて、冗談じゃない

まるでガラス細工を扱うかのように彼女に接した撮影期間

そんな俺の努力を水の泡にしたスタッフを解雇したら、“不当解雇”だと訴えられた

今日はその審議の日

古いツレの市川苺花(いちかわまいか)に頼んだ弁護

彼女はオリンピックを夢見る才能あるフィギアスケートの選手だった

勉強と練習の両立をはかる為、エリザベスに入学して、俺や廉と机を並べた

オリンピックは4年に一度、短い選手生命の中で、その選考にひっかかるのは数えるほどしかないという現実が彼女を限界まで追い詰めた

3年の夏だった 

ほんの小さなケガだった

それでも、毎日の練習で酷使した足は、使い物にならなくなっていた

志半ばで苺花は、幼い頃からの夢を諦めざる得なくなった

苺花の中で何があったのか知らないが、これで腐ってしまうヤツじゃなかった

一度、どん底まで落ちたヤツは強い

もう這い上がるしかないから・・

練習に当てていた時間を勉強についやし、苺花はエリザベス始まって以来の快挙を成し遂げた

芸能科から、国立大の法学部への現役合格

そのまま彼女は司法試験に一発合格し、弁護士という道を進んだ

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