妹彼女
午後のカヌーも終わり、疲れきった体で合宿場に帰り、夜の天体観測を待つだけだった。


冬真恋愛作戦は順調に進み、合宿が終わるまでには、それなりの関係を築けるだろう。


結局ずっと空と会話できず、孤独感と寂しさが俺の頭の中をグルグル廻る。


空と話したい。でも話しかける勇気すら、今の俺には無い。


『触んないで!!』


あの言葉が胸を締め付ける。


空とのキスの感触

頭を撫でた時の笑顔

卵焼きの味

双子の繋がり


今の俺はそれら全てが思い出せない。夢だったのかと思うほどだ。


晩飯も済み、外に出ると、雲一つ無い夜空が、綺麗な星を散りばめていた。


行動班に一つ、天体望遠鏡が渡され、俺たちは順番に星を眺めた。


一部の連中は、彼氏彼女を連れて抜け出し、ムードに浸っていた。こんなシチュエーションは、そうそう無いだろうからな。


冬真も木乃香といい雰囲気になろうと頑張っていた。


「ねぇ海くん!見て見て!この綺麗な星なんて名前?」


無邪気に優が俺を呼ぶ。望遠鏡を覗くと、土星が見えた。


「これ土星だね。わっかは小さな惑星の集まりなんだ。」


「へぇ~。物知りだね~。海くん。」


そんな俺たちを空は不服な顔で見る。


『何よ…優ちゃん…』


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