Cleome
「お前さー帽子かぶっとけよ」

霄があたしの横に置いてあるキャップを手にとって言った。

「誰も来ねぇだろ。」
あたしの通ってた高校の範囲じゃないし。知ってる人なんて来ないはず。

 百パーセント無いとは言えないけどさ。来たら…最悪。
「来たら…」
「あれ?霄じゃん」
あたしの声を遮った声に、思わず霄の後ろに隠れるように少し動いた。

「忘れたのー?メールしたじゃん!」
「あー…」

あたしが霄のアドレスを教えたギャル子じゃん!やばくね!?
今にも逃げ出しそうな霄。逃げたら一生こき使ってやる!又は半殺し。

「ひ、久しぶりじゃん」
霄はさりげなくあたしにキャップをかぶせると、意外にもギャル子と話しだした。

少しは見直したよ。
あたしは関心しながら、立ち上がり、気付かれ無いようにキャップを深くかぶりなおすと、素早くその場から離れた。

幸い、話に夢中で気付かなかったらしい。

あんまり親しいわけじゃなかったし…気付かれるとは限らないか。
気付かれたら、いとこって主張しまくろうと思ってた。

後ろを気にしすぎて、前から来る人達に気付かなかったあたし。
「キャ!」
 人とぶつかったと思ったら、可愛い悲鳴が聞こえた。
「あ、ゴメン!大丈夫!?」
そんなに勢いよくぶつかったわけじゃないのに、倒れて座りこんでる女の子。
「危ないじゃな……」
キッと睨まれたと思ったら、ア然とした表情に。
え?なに?もしかして、同じ学校の面識有りの子!?

「た、立てる?」
まぁ、座らせとくわけにいかないし…。手を差し出すと、あたしの顔を凝視したまま、立ち上がった。

 なんか…気まずい。見すぎだし!

「なんかついてる?」
「あ、いえ!…すみませんでした!」

あ、なんか可愛い声。さっき、一瞬発した声はちょっとドスがきいてたような…。

「じゃ、じゃあ!すみませんでした!」

ペコペコ頭を下げながら、ギャル子の方へ走っていく。げ、友達!?違う学校だよな……。

あたしはギャル子にバレないように、素早く車に入った。
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