Cleome
「宇海って子は女の子だと思ってたよ」
いや、まぁ……女の子だけど…。って、バレたらやばいし!
会長のこのキラキラ笑顔の裏にある疑いの何かがあたしには見える。
黒くない純粋な疑い。こんなんで会長できるのか……?

「男です」
きっぱり言うしかない。
「宇海ちゃんって言ってたし……」
あれだ、会長はあれだ。疑問を素直にぶつけて、知らない内にじわじわと弱らせていくタイプだ。
「最初、女と間違えられて…やめろって言ったのに、他の友達も言っててやめなかった……んです」

……信じろ!これ以上疑問を投げかけるな!

「里美もおちゃめだね。これからも、友達でいてやってくれないかい?」
「あーはい。里美は友達、です」
友達を強調してた気がするんだけど?気のせい?
 あたしも友達に力入れて言ってみた。
「そうだ、急がないと遅れるよ」
「やべっ!」

階段を走る勢いで下りる。
「前!」
後五段のところで、上がって来た誰かと肩がぶつかった。
走る勢いだったせいで、バランスを崩す。バランスをとりなおそうとしても……無理!

階段を転げ落ちるよりはと、階段を飛び降りて見事に着地。
ちょっと大きい音をたてて。

「あぶねぇ〜!」
心臓とまるかと思った!と呼吸を整える。
「ゴリラが飛び降りたみたいだな」

は?何言っちゃってくれてんの!?

階段の上を見ると、黒髪の副会長丙汰玲蔵が無表情で立っていた。
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