Cleome
宇海に投げられた本の当たった所の痛みがやっとで治まって、階段まで来たら会長が立っていた。
めっちゃ心配そうな顔で。
会長の視線を追うと、副会長と……宇海。さっき騒がしかったのはこの二人か。

「宇海、お前……」
「このホモ野郎が!!」
大丈夫か聞こうとしたんだけどな……大丈夫らしい。こんだけ厭味をはけるならな。ある意味大丈夫そうじゃねぇけど。

つーか……あいつ鋭い。副会長は……女が嫌いらしい。宇海とは逆だ。
まぁ……逆と言っても、宇海と決定的に違うのは……男が好きって事だな。
俺も人の事は言えねーけど。でも、俺は女の方が好きだ。

副会長は宇海を見ると鼻で笑った。宇海は……めっちゃキレてるな。眉間にシワよせて、顔を赤くして睨んでいる。

「安心しろ。貴様なんて眼中にもない」
また鼻で笑って宇海の横を通り過ぎた。……そうきたか。
宇海を見ると、俯いて肩を震わせている。小さい声が微かに聞こえてきた。

「……うざい……うざい…」
こんなに本気でキレる宇海を見るのは初めてだな……。二回目か?
「佐藤さん?」
会長が近付いて声をかけると、急に顔をあげた。

「そんな心配してねぇよ!つーか、てめぇなんてこっちから願下げだ!貴様とか何時代だよ!?」
鞄をたたき付けると、階段を駆け登っていく。
あーあ……何やってんだあいつは。俺は鞄を拾いあげると、ため息をつく。
たく、初日の朝から何やってんだか。

こんなんで大丈夫なのか?あいつ。
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