堕ちる(仮)
そんな時私は彼にプロポーズをされた。


鬱状態の毎日。


ずっと外には出なかった。


ボーっとする頭。


訳もわからずサインした。


結婚後しばらくは優しく抱きしめてくれた。


私の病気も少しずつ治る兆しが見えてきた。


あるときから彼の言動がおかしくなった。


家にいてもずっとピリピリしていて、話しかけても冷たくつき返されるだけだった。


突然家のドアが開く、


「美咲ごめん、しばらく帰らない!」そう言って荷物をまとめ、出て行った。


独り取り残された私。


声を出しても返事はない。


私の鬱はどんどん進行していった。


処方箋薬で生きる毎日。


だけど不思議と“死のう”とは思わなかった。


死ぬのもだるかったのかもしれない。


 ニュース番組をつけっぱなしで、ぼけーとテレビを観ていたそのときだった。


彼の名前が呼ばれ顔が映った。


“殺人”だった。


持っていたグラスは手から落ち砕け散った。


数分後、刑事が令状を持って入ってきた。


私は呆然とその光景を眺めているだけだった。


幸運だったのはすでにシャブもハッパもしていなかったことだけだ。


もしまだやっていてそれが出てきたら、私はベランダから飛び降りていたかもしれない。


やっとこの家のガサも終わり、私の容疑もはれた。


そして私はこの街からも逃げた。


また居場所をなくした。
< 11 / 17 >

この作品をシェア

pagetop