堕ちる(仮)
ある日、知らない番号からの電話があった。


普段なら出ないはずなのに自然とボタンを押し、電話を耳に近づけた。


「もしもし?」


「美咲?」


お母さんだ!


何年も会っていないのに、記憶に残っているのも数えるくらいしかないのに、何故か解った。


そして、自然と涙は零れ落ちていた。


「お母さんよ。元気にしてる?」


「うん」


「ごめんね、ずっと連絡しなくて。お母さん合わせる顔がなかったのよ。勝手に今の旦那と出て行って、あなたを置いていって」


「ううん、もういいよ」


「ごめんね。謝っても許してくれないよね。
やっと私も気持ちの整理がついておじーちゃん、おばーちゃんに謝ることができたの。
それでお願いして美咲の電話番号を教えてもらったの。
今日誕生日でしょ?おめでとう」
 

自分でも誕生日なんて忘れていた。


涙が止まらなかった。


祝ってくれた思い出も成長するにつれてなかったから。


私なんて「産まれてこなければいい」と思っていたから。


初めて「産まれてきて良かったんだな」と思えた。


一人でも私の存在を祝ってくれたことが純粋にうれしかった。

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