堕ちる(仮)
16から私の水商売人生は始まった。
 
飲めない酒を飲むのはつらかった。

「飲め」と言われれば飲むしかなかった。

それが仕事だったから。

その都度私はトイレに駆け込み吐いた。

そんな生活が幾度となく繰り返され、吐く回数もどんどん減っていった。

いつの間にかお客さんに酒を勧める側になっていった。

話もだんだんと覚えていった。

やっとなじみ客もついた頃、街を歩いていたらおじさんに見つかり無理やり家に連れ戻された。

 私はおじーちゃんに殴られると思った。

だけどおじーちゃんは「もういいよ。ゆっくり休め」と言ってくれた。


思わずその場にへたり込み泣いてしまった。

それから、おじさんたちを交えた家族会議が始まった。


「学校は一応停学の形をとっているから高校だけでも卒業しなさい」ということだった。


私は何も答えず、ただうつむいているだけだった。


その夜私はまた荷物をまとめ家を出た。


今度は新宿に向かった。
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