うさ耳ダーリン
「―――あいにくですが、僕は誰にも飼われてません」


「…なんですって?」


意外な返答に思わず素で聞き返すと、さっきまできつく握られていた手が少し緩くなった。


「僕は誰の下にもついていませんし―――今後もつく予定はありませんよ」


淡々と、ヤツはニコリともしないで言った。






「……嘘……」


…それはおかしい。


そもそも、経緯はどうあれ、このジルダ国が誇る鉄壁の牢獄に出入りするには、やはり内部の、それなりの地位を必要とするはずだ。


コイツは最初から誤認逮捕されたわたしの正体を知っていたし、牢獄の警備兵とも思えない。





「…誰の差し金でもないとしたら、なんだってわたしの命を狙うわけ?」


どうせ、主君を庇ってるんどしょうけど…


なんたって、わたしが死んで喜ぶ輩は掃いて捨てるほどいる。


むっつりと睨みつけたわたしに、しかしクロウはそれまでの冷めた表情から一転、実に楽しそうに笑った。
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