(短編)大好きがいっぱい。


「―ぅ、ん…アタシ…ねッ、アンタ…じゃなくて、誠実が…好き―。ずっと―ずっと、誠実が―大好きだよ…」

アタシは、とぎれとぎれに気持ちを伝えた。

これがアタシの精一杯。

誠実―
ちゃんと名前で呼べた。

呼びづらい名前って思ってたけど、そんな事なかった。


ただ、アタシが呼ばなかっただけなんだ―…。

「―沙織…」

アイツはアタシを見つめ、ポツリと呟く。

「な、何…?」

アタシは、その先に続くアイツの言葉が恐くて、聞きたいような聞きたくないような―複雑な思いでアイツを見た。

ドキドキ…ヤバイ。
今更、緊張してきた。

胸がザワザワうるさい―。



.
< 30 / 32 >

この作品をシェア

pagetop