diving
プロローグ
また、ここに上がってしまった。
上がったら最後。
飛ぶしかない。
前方には50mプールで遊ぶ楽しそうな声と姿。
私は何をしてるんだろう。
休みもなく練習の日々。
みんなが楽しく遊んでる中、暑い陽射しを受けて。
「楽しそう…」
つい漏れてしまう。
目の前の光景に。
でも私が決めたこと。
飛ばなければ。

1秒ちょっとの。
瞬きなんかしてたら見逃しそうな僅かな時間。
その一瞬で決まる。

意を決して足を踏み出す。
飛び板を踏み込み、宙を舞う。
ザンッ。
私の身体に水が纏わり付く。

一瞬の出来事。

1秒ちょっとの間に技を披露する。
台から離れ、宙に舞い、水に入るまでの僅かな時間の中でいかに美しく演技できるかを競う競技。

それが飛び込み。

私の学生生活は飛び込みに占められていた。

それ以外の思い出などなかった。


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