鬼神の舞

ひょーっ、ひょろろろ


一総の笛に、焔は打たれたように顔を上げた。


「雲雀翔歌…。」

焔は、呟くとジッと笛の音に耳を傾けた。
天に向かって羽ばたく雲雀の様を表した躍動的な旋律は、彼女の胸にじんわりと暖かな温もりの火を灯した。

人の世での再会は叶わなかったけれど…あの人の人生は幸せだったのだ。
だって…私の様な死に方をしていたら魂は鬼になっていたに違いない。
だったら、あの人を探すのは容易かった筈だもの。

これで良かったのだ…。

曖昧な記憶の彼方で、ぼんやりと翳んだ姿で微笑む男女の区別もわからぬ人に別れを告げ焔はニコリと微笑んだ。

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