鬼神の舞

それから暫くして、夕陽が残照を残し地に沈むと梅兼の屋敷の庭には松明が焚かれ庄士一行を迎えるささやかな宴の席が設けられた。

「金平様、宗方様…今月の視察、ご苦労様でした。毎度代わり映えはしませぬが季節の膳を用意しました。どうぞお召し上がり下さい。」

梅兼の差し出す酒を杯に受け、将之はそれを一息に飲み干すと目の前に差し出された膳にチラリと視線を落とし鼻を鳴らした。

「ふむ…如月は蕗の薹か。鯉は無いのか?」

「はい。この季節はまだ鯉は旬ではありませぬので…。」

梅兼の言葉に、将之は顔を顰め大袈裟に肩を竦めると猪の肉の焼き物を箸で摘み口へ放り込んだ。

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