鬼神の舞
「ところで梅兼、あの娘の様子はどうだ?」
「はい。まだ意識は戻りませんが…落ち着いております。」
そうか…。
一総は、短く呟くと杯に残った酒を煽った。
「娘と二人だけで話がしたい。部屋を訊ねても良いか?」
彼の問いに、梅兼は頷いたがそのまま彼の真意を問う様に鬼面の下の瞳を覗き込んだ。
「疚しい気持ちなど微塵も無いぞ。先程の騒動の様子を聞きたいだけだ。」
一総は、平然と答えると静かに腰を上げた。
「将之殿には適当に話を合わせておいてくれ…まぁ、見たところその必要もなさそうだが…。」
一総は、すでに酒がまわり良い気分で飲み食いしている将之を見やって梅兼に小さく言うと、まわりに気付かれぬ様宴の席を抜け出した。