鬼神の舞

“焔…。”

再び声が聞こえ焔は小さく呻き、観念したように目を開けた。
灯明が照らす仄暗い部屋の天井が彼女の目にぼんやりと映った。


ここは、真白の部屋。良かった…私はまだ人界にいられるのだ…。


暫しの間、天井を見つめ物思いにふけっていた焔は、寝床の脇に座す人影に向けて口を開いた。


「貴方は、私の口を封じるためにここへ来たのか?」


それまで石の様に静かだった人影は、彼女の言葉にユラリと動いた。



くくくっ

押し殺した声が人影から漏れ、やがてそれは楽しげな笑い声に変わった。






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