鬼神の舞

「はははっ、目覚めてまもないというのにその様な物騒な言葉がお前の口から出るとは…想像もつかなかったな。」

「何故だ?私は異形の面に隠された、貴方の素顔を見たのだぞ。私が誰かにこの事を話せばあっという間に庄の噂になってしまうかもしれないのだぞ?」

焔は、一総の鬼面に覆われた顔を怪訝そうな表情を浮かべ見上げた。
その問いに一総は笑うのを止め小さく頷くと、胡坐を組み直した。
そして、焔に視線を落とすと静かに語り始めた。


「焔、お前は利発な子だ…私のこの目に何が映っていたのか…あの時、一瞬でわかったのだろう?」

焔は、布団の中で深々と頷いた。
その様子に、一総は口元を緩め小さく笑うと更に言葉を続けた。




「……お前にも同じものが見えたのだろう?」


じじっ

灯明の灯りに誘われた小さな羽虫が、近づきすぎた炎に薄い羽根を焼かれ、水を張った受け皿に落ちた。



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