鬼神の舞

「…あれは水鬼だ。水で死んだ人の魂が鬼になったものだ。」

焔は、一総の鬼面の瞳をジッと見つめたまま答えた。
その言葉に、一総はふっと息を吐くと頭の後ろの紐を解き鬼面を外すとそれを焔の枕元に静かに置いた。

「あいつの名前は“河太郎(がたろ)”だ。気のいい奴だが時々悪戯が過ぎるのが欠点だ。焔には、怖い思いをさせてしまったな…許してくれ。」

一総は、言うと焔に向かって深く頭を垂れた。

「河太郎は、馬を盗む事は一総も承知の上だと言っていた。あれは本当の事だったのだな?」

「私の憂さ晴らしが招いた事だ…すまぬ。」

一総は居心地の悪い表情を浮かべ、焔の視線から面を逸らした。


ふふふっ

布団の中で、焔が笑った。
彼女の軽やかな笑い声に、俯いた一総の整った顔が耳まで紅に染まった。



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