鬼神の舞
「いや…。あの時私は彼らを見て微笑んだのだ。まるで友を呼ぶように彼らを手招き言葉を交わした。異界の住人も人間とさほど変わらぬ。良き心を持つ者もいれば悪しき心を待つ者もいる。笑いもすれば泣きもする。私はそんな彼らを好ましいと思ったのだよ。」
一総はそこで言葉を切ると、焔の顔を見つめニコリと微笑んだ。
「人の世界だけでもややこしいことがたくさんあるのに…。異界の住人とも懇意にするなんて、一総様は変わっているな。」
「変わっているか…。そうかもしれぬな。」
一総は頷くと、鬼面を手に取り焔の方へ差し出した。
ぱさっ
焔は、寝床に身を起こすと彼の手からそっと鬼面を受け取った。
鬼面は思ったよりもずっと薄く軽く、表面は滑らかだった。
表面に細い指先を這わせ、焔は鬼の表情を刻む溝を一つずつ確かめるようになぞった。
人の世では、鬼は…恐ろしく忌み嫌われるもの象徴なのだな。
焔は、徐に自分の顔を鬼面で覆った。