鬼神の舞



だめだ…あの話は、幼い焔にはまだ早い。



一総は、異形の面に宿る一人の鬼の顔を脳裏に思い浮かべ首を横に振った。



焔、俺は…大切な友だった鬼を斬ったのだよ…。


冬枯れた薄の野に轟々と吹き荒れる風の音と、澱んだ鈍色の空を切り裂いた白刃の輝き。
そして、その場に崩れ落ちた鬼の体からドクドクと流れ出る鮮血。


“一総、俺達鬼は、人を守るために天から降りてきたんだ。お前の為にこの命を差し出すのは、俺の務めなんだよ…。”

悲鳴の様な風の音に、今際の際の友の声が重なり一総は顔を歪めた。


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