鬼神の舞

「上総様?」

一総の様子に、焔はいぶかしげな声をあげゴソリと布団から抜け出し、彼の膝の上の鬼面に添えられた手の上に、己の小さな両手を重ねた。


「焔、話の続きはこの次にしよう。…どうやら客が来たようだ。」

一総は、眼を開け焔に言うと、立ち上がり庭に面した縁に出た。


うっうっ…一総さまぁ…
ごめんよぉ…ごめん…


「…河太郎…。」

一総に続いて縁に出た焔は、昼間の粗暴さは何処へやら…すっかり意気消沈した様子で泣きじゃくる彼に視線を移し、その名を小さく呟いた。

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