鬼神の舞

「人ならば、このような時は涙を流すのに…。」

焔は、彼の首に腕をまわしたまま残念そうに言った。

「今のお前は炎鬼だからな。仕方がない。」

神鳴は、そう言うと焔の身体を静かに離した。



「さて…向こうはそろそろ夕刻…発つには丁度良い頃だ。」

彼の言葉に、焔は表情を引き締め背筋を伸ばした。

「下界では、緋色の髪と琥珀の瞳は目立ちすぎる。人の子の様に黒く染めよう。」


神鳴は、胸の前で両手をポンと打ち鳴らした。
焔の髪と瞳は鴉の羽の様な黒に染まった。
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