鬼神の舞

「橋姫か…。」

そう言って少女は再びクスリと笑った。


「私は、橋姫ではない。名を焔と言う。」

真白は、焔と名乗った少女の顔を今度はまじまじと見つめた。
眉で切りそろえた前髪の下に輝く黒い大きな瞳。
腰まで伸びた長い髪は闇に溶け込むかのように黒く、まるで濡れた様な光沢を帯びていた。


「私は…真白。この町の近くにある廣川の庄に花作りの両親と一緒に暮らしているの。」

「廣川の庄?」

真白の言葉に、焔は首を傾げた。
彼女の生きていた頃には、そのような庄は存在しなかった。


「ここから2里程歩いた所にある、小さな庄よ。」

「このような美しい花が四季を通して咲くのだろう?良い所だな。」

焔は先程真白から貰った蝋梅の一枝を眺め、花の匂いを嗅いだ。
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