鬼神の舞

しゃっ


焔が鉄扇の先を二人に向け、それを僅かに動かした。


ぱちっ…ぱちっ

すると、鉄扇の起こした風に煽られた鍬と鋤の柄から小さな火の粉があがり黒い焼け焦げができた。


“あっ、熱っ!”

“我らが悪かった!炭にするのは勘弁してくれぇ。”


付喪神達は、バタバタと衣に着いた火の粉を払うと血相を変えて地に伏せた。
焔は、彼らが必死に懇願する様子を見ると少々やりすぎたかと眉をひそめた。


「九十九の年月人に仕えてきた付喪神を燃やす気は毛頭なかったよ。今のは冗談だ。」

“冗談っ、冗談となっ”

付喪神達は跳ね起きると、こりゃあ一杯食わされたとばかりにごま塩頭をツルリと撫でた。
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