鬼神の舞

「焔、そんなに笑っては…一総様に失礼よ。」

真白はそう言ったが、すぐに彼女も口元に笑みを浮かべ二人は子供らしい笑い声を上げた。


「でも、真白は一総の事が嫌いではないのだろう?彼の事を話す声に角が無い。」

「ええ。私は何度か話し掛けられたことがあるけれど、お声はとても穏やかだった。あの方の人嫌いには、何か訳があるのかもしれない。」


蝋梅の林に着いた二人は、程よく蕾が綻んだ枝を切り背の籠へ入れながら仮面の若武者の話に花を咲かせた。
自分達が向かっている庄の娘達が己の事を話しているなどと一総は思いもせぬであろう。
面嫌いの変わり者が、馬上で嚔でもしていれば面白いのにと焔は思った。

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