鬼神の舞
「宗方、私は少々疲れた。やはり遠路馬に揺られるのは辛いな。今日は客棟に床を敷いて貰うから、後の事はお前に任せる。」
酒焼けで鼻の頭を赤くした将之は、締まりのない表情で一総にそう命じると梅兼の家の離れへ向かった。
「梅兼、彼の要求も程々に聞いておけよ。甘やかす事は無い。」
「はい、心得ております。金平様には何か…ゆるりとお眠りになれるような薬湯を差し上げましょう。」
「うむ。それが良いな。…では、早速畑を見させて貰う。」
彼の言葉に、梅兼は頷き蝋梅、藪椿、水仙が盛りの畑を見やった。
一総も又、その視線の先に目をやり暫しその美しさに魅入られ押し黙った。