鬼神の舞
梅兼らと別れ、暖かな春の日差しの中畑道を歩んでいた一総は一段低くなった水仙畑の畦へ降りた。
水仙は一株を眺めるのも良いが、この様に群生している物を見るのも風情があるものだな…。
一総は畑の検地を行いながら、白や浅黄色の小さな花弁が風に揺れるのを眺め独り言を言った。
一総は月に一度、この庄を訪れ検地を行う事を密かに心待ちにしていた。
ここへ向かう道中の煩わしさ、上役が起こした揉め事の後始末など気分が萎える事も多い視察ではあるが、季節の花々を眺めその香りを嗅ぎ、小鳥の囀りを聞く事は彼にとって都のどんな楽しみよりも心安らぐものであった。