鬼神の舞

さて、次は梅林か…。

一総は、再び畑道へ駆け上り奥に広がる梅林を目指した。


途中、花篭や鎌を持った庄民とすれ違ったが、彼らは一総の姿を見ると皆一様にその場を足早に通り過ぎた。
腰に太刀を下げ、異形の面を付けた彼の姿は美しい花々が咲き乱れる庄の中では脅威でしかなかった。


「一総様、一総様ぁ。」

梅林を見下ろす土手の上から、子供達の声が聞こえて来た。
その声に、彼は片手を上げ答えた。
それを合図に、子供達は歓声をあげ土手を駆け下り彼の周りを取り囲んだ。


“かずさ様、今月はいつまでいられるの?”

“おいら、昨日淵の辺で瑠璃鶲(るりびたき)を見たよ。”

浅黒く日焼けした子供達は、一総の顔を見上げ大らかな笑顔を浮かべ口々に話し出す。
その言葉に頷きながら、彼は一人一人の顔を確かめるように見つめた。


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