鬼神の舞
美しい花が咲くこの庄でも、他の庄と変わらず税の取立ては厳しい。
これ程の見事な花が咲くのだから、相応の収入があってもおかしくはないはずなのに、結局のところ懐が暖かくなるのは庄士を通し財を管理する都の官僚達でしかない。
庄で死者が出たと聞く度に、一総の胸はやり切れぬ思いで一杯になった。
このような事は今日が始めての事ではない。
ここへ通い始めた頃は、そうでもなかったが先の戦が終わった頃から庄民達への締め付けが強くなり生活は苦しくなっていった。
そうなれば…真っ先に淘汰されるのは弱い者達だった。
…先月、ここで会った時はあんなに元気だったのにな…。
一総は、死んだ子の顔を脳裏に思い浮かべ手にした帳面を握り締めた。
それから彼は、子供達の前に跪くと懐から小さな紙包みを取り出し先程の少年の手にそっと握らせた。