鬼神の舞

「真白、庄士様一行がお着きになったぞ。」

焔と二人で、蝋梅の枝を切っていた真白の背に庄の住人が声をかけた。
それを聞き、作業の手を止め二人は顔を見合わせた。


「いよいよ、異形の武者殿にお目通りが叶うのだな。」

「ええ。」

焔の言葉に、真白は頷きニッコリと笑った。


「そうだ、真白。畑頭がお前に用があるらしい。一度家に戻るようにと言伝を頼まれた。」

「わかりました。すぐに戻ります。」

真白は答えると、焔を振り向き首を傾げた。


「ああ、私はまだ籠を一杯にしていない。もう少し仕事を続けるよ。」

「そう。それじゃあ、先に戻るから…焔も仕事が済んだら戻ってね。直にお昼だし…。」

「うん。」

焔は答えると、真白に手を振り再び蝋梅の畝に向き直り砂を踏む真白の足音が遠ざかるのを聞きながら、少々頼りない手つきで枝を切った。
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