鬼神の舞
“おいらも天狗様に賛成!一総の風笛楽が聴きたいぞ。”
一総は、声の主を見つめた。
それは、彼の袂を持ち上げ膝にのそりとよじ登った。
藍鼠色の髪に、青丹色の衣を着た大人の掌程の小さな童はクリクリとした瞳を輝かせながら白い歯を見せて笑った。
「風童(かぜわらべ)か…。風笛楽を吹いても良いが、調子に乗って花を散らしてはならぬぞ。」
一総は、笑いながら言うと風童の小さな頭を人差し指でそっと撫でた。
「それにしても、今日は随分と客が多いようだな。天狗に、蛙爺、梅娘…付喪神達も来ているのか?お前達、仕事は大丈夫か?」
“役立たずの庄士は離れで大鼾じゃ。わしらも少し位仕事を抜けても構わんだろうさ。”
梅兼の離れから抜け出してきた硯と文机の付喪神達は、甲高い声で彼の問いに答えるとカラカラと笑った。
その様子を、一総は黒い双眼を細めジッと見つめた。