鬼神の舞

ひゅぅぅぅ

天かける風が、神鳴の銀糸のような髪を擽り吹き抜けていく。
彼は乱れた髪を、フルフルと首を振り整えると再び口を開いた。


「しかし焔、その目では守るべき人を探すことは不可能だぞ。何しろ見えぬのだからな…。」

「それは…。」

一瞬で、焔の表情が曇る。
クシャリと歪んだ顔…見えぬ目には落胆の色が浮かんだ。
だが、その目からは涙は零れない。
焔は炎鬼だから、涙は出ないのだ。
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