鬼神の舞
いちいち妖怪の姿が見えると騒ぐ我が子に、一総の両親は悩みとうとう一計を案じ彼の顔を面で覆った。
一総の「面嫌い」の訳はここにあった。
「それでは…天狗殿ご所望の風笛楽を吹く。付喪神はこれが済んだら離れへ戻れよ。」
一総は、皆に頷くと黒鳶を唇に当て静かに吹き始めた。
ひょーっ、ひょろろろ
先程の雲雀翔歌と変わり、今度は空を翔る風のように優美な曲が流れた。
風童が、一総の膝からヒラリと飛び降り小さく指笛を吹くと何処からか小さな雲が現れ彼の足元に額づくように停止した。
風童は、それに乗るとそのまま空を切り畑の中を楽しそうに飛び回った。