鬼神の舞
一総は、蛙爺の声に笛を止め太刀と共に傍らに置いていた面を顔に当てると慣れた手つきで紐を結んだ。
がさっがさっ
下草を踏みしめる小さな足音を背後に感じながら、一総は深く息を吸い今まで高ぶっていた感情を押し沈めた。
「私が笛を吹いている間は、この淵から人払いをして貰っているのだが…。」
一総は、そう言いながら静かに後ろに立つ人間を振り返った。
「さっきの曲を吹いていたのは貴方か?」
一総の言葉を遮るように、彼に詰め寄り問うたのは歳は十二位の少女だった。