鬼神の舞
「そうだ。…ふむ、この庄では見かけぬ顔だな。ならば人払いの件は知らぬか…。」
一総は、表情の見えぬ鬼面の下から静かに答えた。
答えながら、彼は少女をマジマジと見た。
健康そうに日に焼けた肌、長い漆黒の髪と同じ色の瞳…その瞳は、生命力に溢れ不思議な魅力が宿っていた。
「私の名は焔…この庄には昨日の夜来たばかりだ。」
一総と、対峙した焔は両手を強く握り締めたまま彼の顔を見つめそう答えた。
くくくっ…。
その様子に、一総は抑えた笑い声を上げ彼女を手招いた。
「焔か、良い名だな。それにしても…そんなにこちらを睨むな。ものの怪よりも恐ろしいぞ。お前の問いには全て答える。」
彼の言葉に、焔は固い表情を崩すと彼に誘われるまま柔らかな下草に腰を下ろした。