求命
植え込みから友蔵が飛び出してきた。その手には麻の鞄に入っていた鉈があった。再び、鮮血が舞った。それはさっきとは比較にならない量だ。同時に舞うものがあった。男の腕だ。奪われた鎌と一緒に、男の腕が舞った。くるくると二回回転し、そして地面に落ちた。
「こいつは・・・こいつは人じゃねえ。殺すしか、この場で殺すしかねえ。」
そう言う友蔵の表情も、とても人のものとは思えなかった。妹を殺された憎しみ、それが友蔵を獣に変えていた。
「と、友いっつあん。いいのかよ・・・?」
「あぁ、かまわねえ。殺してやる。」
とても止める事など出来そうにない。ならば、友蔵にノるしかない。
「わ、わかった。おら達も手伝う。」
「そうしてくれ。でも、でもな・・・トドメだけは俺にやらしてくれ。」
誰も返事をしなかった。出来るわけがなかった。
< 10 / 69 >

この作品をシェア

pagetop