Sour & Sweet(バレンタイン&ホワイトデー企画)
家の玄関を開け、そのまま部屋へ直行しようとしたら、お袋に呼び止められた。



「優、帰ったらまず弁当箱出してちょうだい。」



「えーっ…。」



「えーっ…、じゃない!

アンタは、いっつも忘れるんだから…。」



「あー、はいはい…。」



鞄の中身の都合上、一旦部屋に行きたかったんだけど…。



青春真っ只中な男子高校生の鞄の中は、時々見せられないもの入れてるってことを分かって欲しい。



「あーっ、分かった!

優ってば、また友達から借りたエロ本でも鞄の中に入れてるんでしょ?」



そうやって余計なことを言うバカは、大学生の姉貴。



俺は姉貴を睨みつけると、鞄を開けて弁当箱を取り出した。



チョコが見えないように、気をつけながら…。



「何が出るかな、何が出るかな~♪」



なんて歌いながら、俺の鞄をゴソゴソとする姉貴。



「うわー!やめろぉぉ!!」



俺は姉貴から鞄を取り返そうと、躍起になる。



異常現象が起こっても、この家の中はいつもの様相を呈していた。



「優、チョコ貰ったのーっ!?」



姉貴はそう言うなり、俺の鞄の中からチョコを奪った。



目敏い奴め!



「あらまぁ、このチョコ人気があるのよ。

しかも、なかなか手に入らない限定品じゃないの。」



お袋が姉貴の手の中にあるチョコを眺めながら言った。



さすがグルメ情報には強い主婦だと、ちょっと感心。



情報は得ても、貧乏だから活用できないけどな。



「本命にあげるんじゃなくて、逆チョコで欲しいってみんな言ってるよ。」



姉貴はそう言いながら、包装を解き…って、ゴルァ!



「姉貴、何してんだよ!!」



「何って、食べるに決まってるじゃん。」



「気が向いたら、お母さんにも頂戴ね。」



コイツら、俺の物だってこと分かってるのかよ?





< 13 / 42 >

この作品をシェア

pagetop