Sour & Sweet(バレンタイン&ホワイトデー企画)
「ピアノ、習ってるんだ?」



翠子がくれた便箋を見ながら喋る。



「4歳の時に習うように言われてから、ずっと…。」



「ちゃんと続けてるんだから、すげぇーよ。

ウチの姉貴なんか、自分から習いたいって言ったくせに練習が嫌だとか言って、速攻で辞めたんだぜ。

しかも、ピアノ買った直後だったから、親父がめちゃくちゃ怒ってた。」



「ピアノは、どうなさったの?」



「従妹がピアノやることになって、確か…あげたんじゃないか?」



いや、売ったんだっけ?覚えないけど。



「それなら、良かったです。

弾いてもらえずに置かれたままでは、ピアノが可哀想だから…。」



ちょっとだけ会話が続いて、ホッとした。



喉がカラカラなのに気づいた俺は、氷が溶けたコーラを飲み干す。



「あ…。」



窓の外を見た翠子が、声をあげる。



やたら姿勢のいいオッサンがこっちを見たかと思うと、店内に入ってきた。



「お嬢様、本日はピアノのレッスン日でございます。

お召し替えの時間もございますので、お戻りください。」



「レッスンには、このまま向かいます。」



「学校で遅くなったのならともかく、寄り道して向かうのはいかがなものかと…。

しかも、このような場所とあっては、品格に関わります。」



品格って…。



翠子んち、どーゆー家だよ?




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