Sour & Sweet(バレンタイン&ホワイトデー企画)
翠子が、唇を噛み締めた。



まるで、帰りたくないとでも言うように…。



かと思うと、キリッと引き締まった顔をして



「分かりました、5分後に…ここを出ます。」



それだけ言って、まだ残っていたポテトを食べ始めた。



切り替え、早っ!



「かしこまりました、すぐに車を用意いたします。」



オッサンはそう言うと、俺をひと睨みして店を出た。



あいつ、ヤな野郎だな。



「優さん、予定より早く帰ることになってしまいまして、申し訳ありません…。」



黒塗りの車に乗り込む翠子が、あまりにも悲しそうな顔をするから…



「いいよ、ゆっくりできる時にまた会って、いっぱい喋ろうか。」



なんて、口走ってた。



翠子の笑った顔は可愛いから、いつでも笑っていて欲しい。



その気持ちだけで、発した言葉だった。



一目でスッゴイ高級車だと分かる黒塗りが走り去って、俺はようやく現実を見ることができた。



どう考えても住む世界が違う面倒臭そうな女と、また会うってか!?



何考えてんだ、俺!?




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